アスベスト事前調査

2021年4月からアスベスト(石綿)への対応が強化されました。工事前の事前調査が必須になり、2022年4月からは事前調査結果の報告が必要になり、2023年10月からは、有資格者による調査が必須になります。

目次

事前調査の種類

事前調査は、

① 机上調査(又は書類調査)

② 現地調査(又は目視調査)

(検体採取、)

③ 分析調査

があります。

すべての工事で工事着手前に調査を行う必要があります。

調査は、調べて明らかにすることです。調査結果は、専用のページに登録しすることで労働基準監督署と自治体への報告が求められています。工事費が100万円未満、80㎡以下の解体工事などは、石綿事前調査結果報告システムへの登録(報告)は不要ですが、この場合でも、調査は必要です。

金額と面積の基準の他に工事内容が金属類や木材、プラスチックなどの加工等の作業のみの場合やパーツの交換だけの場合も、登録(報告)は不要です。

実施する工事の契約図面に対象がなかったとしても、現場と図面があっているかの確認は必要になります。現場に行ったら、石膏ボードや塗装などの加工等の作業が必要なことが判明するケースが考えられるからです。現場と図面に相違がなかった場合は、相違がなかったことを写真などで記録し、調査は終了です。

自治体等が発行しているこの制度を説明しているパンフレット等で上記のような明らかに石綿を含有していない建材だけを扱うケースは、「調査は不要」と書いてあるものもありますが、厳密には誤りです。必ず、現地との突合をしてください。

対象の有無の確認も現地との突合もそれぞれ机上調査と現地調査に該当します。

石綿事前調査結果報告用のホームページへの登録は、元請会社が行うことになっています。

調査をする人

2023年9月までは、誰が調査をしても良いのですが、10月からは有資格者に調査をさせなくてはいけません。机上調査と現地調査だけで調査が終了するケースも出てきますが、これも有資格者が行う必要があります。分析等を伴わない場合にも調査を外注することは可能ですが、工事件数が増えてくると、外注費がかさむ上に外注先が忙しくて対応出来なくなると工程の遅れにも繋がってしまいます。

社員が建築物石綿含有建材調査者を取得していれば、その外注費が削減出来ます。この資格は、3つの区分があります。

特定∶すべての建物の調査

一般∶すべての建物の調査

※現時点では特定と一般との明確な扱いの違いはありません。

一戸建て∶一戸建て住宅や共同住宅の専有部の調査

受講資格があれば、講習を受けて簡単な試験で取得できます。

この他に「同等以上の能力を有すると認められる者」が定められていますが、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても、引き続き同協会に登録されている者(石綿調査診断士)が対象になります。

私(管理人)は、石綿協会(JATI協会)が行っていたアスベスト診断士を取得していますが、制度改正の際に調査の知識を有する人を証明する資格から外れました。特例としてアスベスト診断士が石綿調査診断士になるには、日本アスベスト調査診断協会に所属して、講習を受けて試験に合格すると石綿調査診断士になれる措置がありましたが、それをせずに石綿作業主任者を受講して一般建築物石綿含有建材調査者を取得しました。

制度としては、この調査者を大幅に増やさなくてはいけない状況のため、落とす試験ではなく、ポイントを理解してもらうことに主眼があるため、前述のとおり簡単な試験になっているようです。

石綿作業主任者の技能講習を含めると一人あたり75,000円前後くらい費用はかかりますが、それを越えるメリットはあると思います。

実施しなくてはいけないこと

労働基準監督署と自治体に報告(登録)の他に

・施主への調査結果の報告

・作業場所への調査結果の掲示(A3以上のサイズ)

含有建材があった場合

・工事計画の届出(レベル1、2)

・施主への工事結果の報告

届け出については、自治体ごとに条例で様々な基準があるため、着手前には自治体の環境課などに相談しましょう。

不明なことがあるときの対応

迷ったら石綿総合情報ポータルサイトにすべての情報が出ています。と言いたいところですが、そうとも言いきれないため、労働基準監督署の担当官に相談すると親切に教えてくれます。

余談ですが、労働基準監督官は司法警察員でもあるため、敬遠される方も多いと思いますが、警察官の方と同じできちんとしようとしている人には、アドバイスをしてくれます。労働安全衛生法の専門家で、実情も踏まえた対応を教えてくださることもありますのでお勧めです。労働安全コンサルタントは、そのアドバイスなどの部分の役割を期待して設けられた資格制度ですので、身近にいらっしゃる場合は、活用してください。もちろん、私でも対応は可能です。

分析調査まで行う機会があれば、分析会社の担当者に相談をすることも方法のひとつです。何がなんでも分析調査をさせようとする会社の場合は少し考えた方が良いと思いますが、私が知っている担当の方は、皆さんキチンとアドバイスしてくださる方ばかりでした。

制度が厳しくなった背景

ところで、この制度、ものすごく面倒ではありませんか?

これまで少しずつ厳しくなってきましたが、ここへきて一気に厳しくなりました。

昭和の後期から平成の半ばまでに大量にアスベストは使用されました。それは、当時、夢の材料と呼ばれて、その性質から色々と応用されて多用されました。

耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性などの性質があります。建材では、有名なのは耐火被覆としての吹き付け石綿です。

また、繊維状になっているため、添加することで、材料同士を繋ぎ止める役割を果たし補強になります。舟や浴槽で使われているFRP(繊維補強プラスチック)は、アスベストではなくガラス繊維を使用していますが、単なるプラスチックよりも強度が上がっています。

こんな便利な性質があったため、ボード類、練り混ぜてつくる保温材のエルボー(折れ曲がり部分)などに使われています。

また、塗料や接着剤に混ぜると繊維が塗料同士を繋ぎ止めて伸びが良くなるため、製品自体に入っていなくても現場で混入しているケースもあります。

このように便利な性質があったため大量に使用されて、その後、人体への危険性がわかると、使用が禁止されていきます。

禁止されてから、除去を積極的に行う動きが出た時期もありましたが、除去するために非常に手間と費用がかかることもあり、除去ではなく、囲い込みや封じ込めの対策をして、建物を解体するまで、そーっとしておくこともOKになっています。

このそーっとしておいたアスベストは、まだまだ大量にあります。

が、そのそーっとしておいたアスベストのある建物がそろそろ耐用年数を迎えて建て替え、解体の時期が迫ってきています。

それをこれまでのルールで処分していると不適切な処分をされてしまい、健康被害が広がってしまうリスクがあります。そこで、アスベストに関する知識を持った人を増やして適切に処理をしていくことを目指しました。

きちんとした人ばかりなら、ここまでで充分な対策です。しかし、世の中にはよろしくない方々もいて、知らん顔して不適切なことをしてしまうため、報告を義務付けられました。

キチンとする人たちが、キチンとしない人たちの煽りを受けた制度なので、納得いかない部分もあると思いますが、アスベストを拡散させないで処理をするための制度ですので、身近な人の顔を思い浮かべながら、その人の健康を害さないための取り組みだと思って頑張りましょう。

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